賃金が上がらない理由とは?

働き方改革で業務時間が短縮され残業代が減り、仕事量は減らないのに給料も一向に上がらず忙しさが倍増し、モチベーションが下がっているサラリーマンが非常に多いようだ。

一部業界では人手不足も深刻化し、まさに貧乏暇なしのフル稼働状態だが、この苦行状況は一体いつまで続くのか?

このような状況下でも給料が上がらない原因、理由を考察してみる。

給料が安い仕事・高い業界

世間でブラック企業と言われる低賃金で長時間労働(残業代のピンハネも)が多いのは、小売、外食、飲食、介護といった労働集約的な業種である。

働けど働けど一向に給料が上がらず楽にならないのは、その人個人の能力が低いのでは決してない。

給料が上がらない経済状態が悪いのであって、強いてはこの状態を放置し続けた政権・日銀が悪の権化なのだ。

一方で、給料が高く労働環境が良好なのが金融や商社や製造業など資本集約的な業界である。

特に金融でも銀行は自己資本が10%程度で、売っている物も融資やM&Aや投信販売など製造コストがかからないサービスであるため、損益分岐点を超えると利益率が圧倒的に他産業に比べて高くなる。

産業構造的に利益率が高いから給与も高く、景気が上向くと改善率も他を圧倒することとなるのだ。

リーマンショック後に銀行が救済され、しかも高給を得ている事に対する不満から、米国では「ウォール街を占拠せよ!」と格差社会に抗議するデモが拡大していたが、本当はビジネスの構造上ある意味仕方ない部分はあるのである(米国は確かに極端だが)。

アベノミクスで賃金アップ?

雇用環境は、有効求人倍率が2009年の0.47倍をボトムにして今年9月には1.52倍と高い水準まで回復し、完全失業率も2.8%と完全雇用と言われる(ウソだが)水準まで回復している。

そう、日本はアベノミクスにより企業業績は過去最高水準となり、雇用環境も回復し労働需給は逼迫している。

しかし、労働環境が逼迫しているのに賃金アップが鈍いことに不思議に思っている人は多いようだ。

これに対する回答となる一つの視点をお示ししよう。

まず、現在、人手不足に陥っているのは小売や運輸や介護など労働集約的な業界の一部に留まっていることは既に説明した。

そう、この人手不足が一部業種に留まっていることが問題なのである。

簡単な例を挙げて見る。

サプライチェーンが川上(素材)、川中(加工)、川下(小売)とあり、それぞれの賃金を100とし、消費性向を0.8とすれば、購買力は、100×3×0.8=240となる。

現在、人手不足になっている川下(小売)だけ、賃金を10引き上げたとすると、購買力は(100+100+110)×0.8=248となる。

しかし、川下だけ10賃金引き上げると、最終消費が8しか伸びないので利益が減少することとなるのだ。

これが、全体で人手不足が発生し賃金を各々10引き上げると、110×3×0.8=264となり、最終購買力が24増え、小売りの10のコストを上回る値上げが可能となるのだ。

つまり、川下の一部業種だけ賃上げすると、そのコストを上回る消費の伸びが期待できず利益減少となるため、コスト増を賄える給与上昇は、全体で労働需給が逼迫し全体で賃金を引き上げる必要があるのだ。

そう、今はまだ一部業界だけのデフレ脱却に留まっている過渡期なのだ。

いつ賃金は上がるのか?

賃金とは何か?

労働者の価格だ。

物価とは何か?

財やサービスの価格だが、実は労働者の価格を内包しているのだ。

どういうことか?

売上の中に人件費が含まれており、全産業の平均が約17%だ。

つまり、賃金を引き上げるには、それを賄える物価上昇が必要ということだ。

物価が上昇してない中で(需要が弱い)、労働需給の逼迫だけでは賃上げすると、更に需要が下がりダブルパンチを食らう危険性が高くなるのだ。

よって、今賃上げに必要なのは労働環境ではなく(これはほぼクリアー)、物価動向なのである。

現在は既に需給ギャップがプラスに浮上しており、今のペースからすると2018年の後半には1%程度の物価上昇が期待できそうである。

そうすると、製品価格を1%引き上げた場合、売り上げに占める人件費の割合を0.17とすれば、1%÷0.17=約6%の賃上げが可能となる。

もちろん、ここまでは上がらず実質賃金が1~2%程度のプラスとなる2~3%程度の賃上げが妥当であろう。

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