本日の某経済紙にも掲載されていたが、7月後半からバリュー株のリターンリバーサルが継続している。
一方で、これまで堅調に上昇していたディフェンシブ銘柄が売られ冴えない展開となっている。
これの流れは続くのか?
そのカギを解くには、まずは正しい現状分析が必須である。
将来は現在の延長線上にあるのだから、現在を正しく理解できればその先の予測の精度も上がることとなる。
しかし、本日の経済紙に記載されていた内容は枝葉は正しいが、キモの部分を理解していないようだ。
経済紙では、このバリュー株のリターンリバーサル発生の背景の主因を金利上昇としていた。
つまり、こういうことだ。
株価を算定する際に金利を分母におき割り引くが、金利上昇でこれまで割高に推移していたディフェンシブ銘柄が売られバリュー株に見直し買いが入ったと。
しかし、この内容には無理があるのは容易にわかるだろう。
分母に置く金利上昇の影響はディフェンシブでもバリュー株でも同じ条件ではないか。
なぜ、デフェンシブだけ極端に売られ、バリュー株が強烈に買われるのかの理由としては弱い。
確かに金利上昇局面では、それまで堅調であった成長株が割引率の上昇から、今の株価を維持できなくなり下落するケースは多い。
しかし、今売られているセクターは成長株ではない。
そう、ディフェンシブセクターということがポイントである。
なぜ、この近年2年程ディフェンシブ銘柄が堅調であったか理解しているだろうか?
それは、国内外であるファンドの設定が異様に増加していたのだ。
そう、最小分散ファンドである。
最小分散ファンドを簡単に説明すると、リスクの低い銘柄を集めたポートフォリオだ。
この最小分散ポートフォリオで運用すると、市場平均よりリスクは低く抑えることができる上に、長期的には市場平均以上のリターンを享受できるといった考えがベースにある。
これはリスク・リターンの関係性からは説明できない。
通常はリスクをより採った方がリターンも高くなるのに、それが逆に低いリスクの方が高いリターンをとれるのだから。
そう、これは理論的には説明できないアノマリーに着目して組成したファンドなのである。
理論的には説明できないのだが、実証的には証明されており、この実証研究が進んだことと、近年の高いボラティティ相場からリスクを抑制するニーズが高まり、この最小分散ファンド設定が急増したのだろう。
そして、この最小分散ポートフォリオに組み込まれる銘柄は、リスクの低いセクター、そう、つまりディフェンシブ銘柄が中心となっているのだ。
まず、運用で意味するリスクを説明しておこう。
一般社会で使用するリスクとは危険な度合といったニュアンスだろうが、運用の場合のリスクとは株価の変動率を意味するのである。
つまり、リスクの低い銘柄とは業績変動率も小さく、株価の値動きの変動率が小さい銘柄である。
よって、日常的に必要とされる財を提供しているセクターである、医薬品、食料品、水産・農林業といったディフェンシブセクターが最小分散ポートフォリオに組み入れられることとなるのだ。
だから、近年(ここ2年程)はディフェンシブセクターが恒常的に割高で推移しパフォーマンスが好調であったと考えていいだろう。
一方で、バリュー株とはどんなセクターかわかるだろうか?
バリュー株とはその名の通り割安株である。
バリュー、割安に放置されている銘柄である。
7月後半から急上昇しているバリュー株とは、内需の代表である銀行株や、鉄鋼、非鉄金属といったシクリカルセクター、外需セクターである輸送機器や電気機器といった業種である。
では、7月後半からディフェンシブセクターが売られ、一方でバリュー株が急上昇しているのか理論的に説明できるだろうか?
これが解れば、今後の株価動向も自ずと見えてくるはずだ。
ちなみに、8月の業種別騰落率は、TOPIXが+0.5%に対し、バリュー株である鉄鋼が+9.4%、銀行が+7%、輸送用機器が+4%、一方でディフェンシブセクターである医薬品が▲10%、食料品▲8%、水産・農業が▲11%である。
この顕著なリターンリバーサルを腑に落ちる説明をしているメディアは皆無だ。
次回は、「株価予測の最強の公式」で今のバリュー株のリターンリバーサルの背景を紐解いてみる。
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