なぜ人手不足に?その原因と対策と嘘とは?

人手不足は深刻でも懸念ではなく好材料だ

 

ここもとアベノミクスによる日本経済の改善により、一部の産業では人手不足が発生している。

最近もヤマト運輸がアマゾンの当日配送撤退検討など人手不足で宅配サービスを抜本見直す動きが話題となっている。

そして、多くの識者やメディアでは、この人手不足をマイナスの要因として受け止めているようだ。

大半のメディアの報道はこんな感じだ。

「どれだけ景気が良くなっても人手不足により労働供給が不足し人手を確保できなければ、経済成長が制約される。」

これは一見すると正しい主張に聞こえるが、今の日本経済では全くの嘘のデタラメであり真に受けると投資チャンスを逃してしまうから気を付けねばならない。

なぜならば、今の日本の一部産業で発生している人手不足は、日本がまさにデフレからインフレ経済へ移行する過渡期としてのサイン、兆しであることを理解せねばならない。

わかるだろうか。

今起こっている日本での人手不足は、「懸念」でも「経済成長の制約」でもなく、実は「好材料」なのだ。

 

人手不足を成長の足枷と主張するメディアの危険性

 

確かに、人手不足が起こっている一部産業では、本当に大変な状況であろう。

そして、この大変な状況を、大変だ、大変だ、と現実を意味のある分析を全くせずに、目の前の現象をそのまま叫んでいるだけのメディアや投資家が殆どだ。

実は目の前で起こっている現実を正しく把握、理解できれば、未来予測など容易なのである。

逆に言えば、多くの投資家やメディアは現実が見えておらず幻想ばかり見ているから、今の自分の立ち位置がわからず、一歩先が崖であると錯覚し尻込みしたりするのだ。

なぜ、今を正しく見れない人間が殆どなのか?

それは、思考が短絡的であり複眼思考、俯瞰思考を駆使する知識も意識なく、その訓練もしてないからである。

この今を正しく見る目を養うために必要なものが、経済学や政治学や哲学や心理学などの現代版リベラルアーツであり、これはこれからの時代ますます重要となるだろう。

AIは既に限られた分野で人間の能力を凌駕しているが、まだまだ汎用的な力、総合的な能力では人間には到底及ばない

よって、1分野+1分野を2分野以上の効果を生み出す各分野を統合する力こそ、我々がAI時代に身に付けるべきものであり、このブラックボックスの「分野を統合する能力」を卓越させるために現代版リベラルアーツを学ぶ必要があるのだ。

投資家だけでなく、これからの時代を生きていく人間には必須の能力だ。

話が逸れてしまったので、話を人手不足問題へ戻そう。

そもそも、人手不足を経済成長の制約になると懸念を主張している人の思考はこんな感じだ。

「景気が良い中で人手が確保できないと、需要が供給(人手)を上回り物価が上昇する。そして、人手を供給できないのだから、経済成長はなされず物価だけが上昇する。そうすると、経済成長しない(所得増えない)のに物価が上昇するから、実質の所得は低下する。所得が低下するとGDPの6割強を占める個人消費が低迷し、景気回復は腰折れするのではないか。」との主張が大半だろう。

そして、反アベノミクス派がこのリスクを回避するためには、日銀の異次元金融緩和の縮小や、財政出動の縮小といった愚策を主張し騒ぐことで、再び日本経済を奈落の底に突き落とすことになりかねないリスクが発生する危険性があるのだ。

 

一部業界が人手不足に陥っている原因

 

今、人手不足になっている一部業界の代表は、運輸業、小売業、建設業、飲食サービス業などの労働集約型の産業だ。

そもそも、なぜ、これらの一部産業で人手不足が発生しているのだろうか?

例えば、アベノミクス以降、真っ先に人手不足が顕在化した建設業界の経緯を思い返してほしい。

同業界の人手不足は、これまでデフレ不況が続く中で、需要が低迷し業界全体として収益が上がらなくなり、その対応でリストラを繰り返し、それでも間に合わず廃業する会社も数多く存在した。

そこに、震災復興需要やオリンピック需要やアベノミクス効果もろもろで、民間の建設投資が一気に盛り上がり、供給不足が発生したのだ。

かつての建設業界は数少ないパイ(需要)を取り合っていたので、ゼネコンは発注者に対して価格交渉力が全くなかったため、赤字受注なども珍しくなく、収益性も低迷していた。

それが、今はどうだ?

状況は様変わりしているだろう。

 

人手不足業界の対策は新時代の幕開け

 

人手不足の業界は、需要超過により価格交渉の主導権も手にし、人件費の上昇も止まらないが、価格に上乗せすることで適正な利益も得る事ができるようなっている。

人手不足→賃金上昇→値上げ→労働生産性改善」といった、まさに他の業界に先駆けてデフレからインフレ経済へと成長サイクルへ移行しはじめている。

建設業界はじめ一部産業での人手不足は、単にこれまでの不景気の後遺症に過ぎないのだ。

どん底の景気状態から、急速に需要が顕在化したために、短期的な供給不足が発生しているだけである。

だから、これを日本経済にとっての真の意味での人手不足(供給制約)などと勘違いすると、今後の日本経済の方向性を見誤ることとなるであろう。

 

人手不足は嘘で実は日本には人手が余ってる

 

実は、そもそも今の日本で人手不足の問題など発生する状況ではないのだ。

えっ?本当に?

だって人手不足でヤマト運輸のドライバーは長時間労働で疲弊してるし、有効求人倍率も1.40 倍と1990年バブル期並みの水準にあり、失業率は2.8%と1995年以来の水準ででほぼ完全雇用ってメディアで報道されているじゃない?って思うかもしれない。

しかし、今の日本にはまだ人が余ってるのだ。

今、人手不足となっているのは運輸、建設、小売り、飲食サービスなど非製造業の内需企業が中心だ。

これらはデフレ不況の影響をもろに受けていた業種だ。

だから、新人教育や新卒採用のコストも賄えないことから、即戦力を求めるざるを得なかった景気状況が長く続いたことが、今の内需企業の人手不足を招いている。

そういった状況下にて、アベノミクスで急激に景気回復となり需要が顕在化してきたために発生している現象なのである。

しかしながら、確かに一部産業では人手不足の状況となっている事は事実だが、日本経済全体を見渡せば、人手はまだまだ余っているのである。

実は今の日本は実体としては完全雇用からは程遠い状態なのだ。

つまりこうゆうことだ。今はその職探しを諦め失業者にもカウントされていなかった人達が労働市場に復帰し続けている状況が続いており、労働参加率が改善してきている。

労働参加率とは、15歳以上の人口に占める労働力人口の割合であり、日本は90年以降のデフレ不況で労働市場への参加を諦める人が増え、失業率の分母から外される非労働力人口が増えて労働参加率は低下の一途を辿った。

労働参加率は90年代前後はの63%強から一貫して低下したが、アベノミクスが始まる直前の2012年に59.1%でボトムをつけ、その後は4年連続で上昇し、2016年には60%に戻ってきている。

因みに、アベノミクスが始まる前の2~3 年の間、労働参加率はほぼ横ばいでドン底で推移していた。

だが、労働参加率が改善したとはいへ、まだボトムから1%弱の改善に過ぎず、日本にはまだまだ潜在的な労働力が存在するのである。

つまり、今の人手不足は長期のデフレ不況の影響をもろに受けていた一部業種で人材コストを極度に圧縮した影響が景気回復過程で発生しているだけであって、人手は日本にはまだまだ存在している。

 

人手不足対策は時間と働き方改革で解消

 

よって、今の人手不足は一時的な問題であり時が解決してくれることになり、遅かれ早かれ人手不足は景気回復の中では自然と解消される現象なのだ。

実際に、これまでアベノミクス前までの人材マーケットでは即戦力重視であったのが、今は新卒や中途採用を増加させ、人材教育に投資を増やす企業が増加してきているではないか。

収益が低迷するデフレ経済が長年続いていたから、一番高いコストである人を削減し続けていたのが、これまでの日本だ。

それが、収益性が上昇する経済(インフレ)になれば、更に稼ぐために、これまで絞ってきたコスト(人手)をかけることが出来るのは当然だ。

また、アベノミクスの一環で働き方改革が推進されているが、これも人手不足解消を加速させ、日本経済の成長に大きく寄与していくだろう。

ここでは割愛するが詳細はこちらを参照してほしい→働き方改革

 

人手不足でアベノミクス縮小の発想は究極の愚策

 

現在、人手不足になっているのは運輸、建設、小売り、飲食サービスなど一部業種だけである。

まさに、一部業種だけが一足先にデフレ脱却しつつあるだけで、他の産業への波及はまだまだであり、日本経済全体ではまだインフレ経済への過渡期状態だ。

この状況下で、この一部業種の人手不足を懸念してアベノミクスを縮小すれば、デフレ脱却の萌芽が摘まれ日本全体が腰折れしてしまうことになるだろう。

日本は今、90年以降のデフレによるゼロ成長で棒にふった時間を取り戻す動きになってきている。

その日本経済復活の萌芽を摘まないためにも、誰が正しい発言をし、誰がデタラメな主張をしているのかを見極める力を身に付ける事が大切だ。

バカの割合が、ある一定水準の閾値を超えると、その国の民主主義は悪い方に作用することになるのだから・・・

給料上がるの待つべきか転職すべきか?

6 件のコメント

  • 人手不足になって、賃金が上がり、消費が増え、経済が成長するのに、そんな基本的な事すら分からず、人手不足の為に経済が成長せず大変だ、とするメディアって非常に多いですよね。あれって何なんでしょう?
    ここのブログでも読んで勉強して欲しいですね。

    • コメントありがとうございます。基本的にメディアの記者で経済の法則を正しく理解している人は稀で、足元で起こっている事象に対して近視眼的になり、それを大げさに主張することで読者の関心をとろうとしているのだと思っています。部分を近くでしか見れないからピントが合ってないのでしょうね。民主主義は衆愚が一定以上増えるとあぶない方向にいくので、影響力のあるメディアはその責任の重さを認識してほしいですね。

  • 人手不足が一部だけで一時的っていうのはデータからも周りの様子からも全く賛成できないのですが…
    一部業種って、一般事務以外、一時的って30年くらいのことを言っているんですかね?
    アベノミクスで物価と税金だけが上がって、仕事量は増え、年々生活は苦しくなるばかりです…

    • コメントありがとうございます。
      本ブログ記事はあくまで私の感覚の枠を脱しないため、読者の方との肌感覚の乖離が発生することも多々ありますことはご容赦頂ければ幸いです。
      その上で頂いたご質問にお答えさせて頂きます。
      人手不足が発生している一部業種とは、小売、飲食、外食、介護、建設といった労働集約的なものです。
      一方で金融、製造業など資本集約的な業種では過度な人手不足が発生していないことは、厚労省の一般職業紹介状況や、毎月勤労統計からも確認できます。
      製造業や金融などは資本集約的というビジネス構造に加え、派遣など非正規雇用を正社員に切り替えたりしていることもあり、小売りなどの様に正社員の求人を出している割合が圧倒的に低いのです。
      この状況を川上、川下といったサプライチェーンで例えると、川下の業種のみで人手不足が発生しているため、値上げするとそのコストが川下のみで負担することとなり利益減となるため、値上げも出来ず人手も足りず賃金も上がらない状況となっているのです。
      川上から川下まで全業種で人手不足が発生すれば、利益を確保する値上げが連鎖的に発生し、賃金も上がるものと考えます。
      つまり、全業種参加型のデフレ脱却できる経済にならないと幅広の業種で適正な値上ができないのであり、今はその過渡期だということです。
      賃金上げは値上げしてその人件費を賄える状況でないとできませんので、まさにデフレからインフレ経済への移行が必要なのです。
      そして、今の状況でいくと2018年後半にはコアインフレ率が1%に達すると思われます。
      全産業の平均で売上に占める人件費が16%であるため、売価を1%引き上げると、全ての条件が同じとすれば1%/0.16で6%以上の賃上げが可能となります。
      実際にはこんなに一気に賃上げはしないでしょうが、持続的な物価上昇1%で賃上げがなされる経済に移行すると思われます。
      あと、人手不足解消ですが、賃上げが可能な経済になれば業種の枠を超えた人の流動性も確実に上昇するため、採用増加や人材教育や、また設備投資増加などで生産性も上昇し、人手不足も緩和されていくと思います。
      以上の様に考えてます。ご質問頂いたサラリーマンA様が、どのような職種でどういった環境でお仕事されているのか存じ上げませんので、全く当てはまらない的外れの回答となってしまった場合は申し訳ありません。
      現在、デフレの後遺症で多くの人が仕事量の割に不当な賃金で働き、先が見えないといった状況は私の周囲の知人からも良く耳に入ってきており、痛いほど理解しているつもではおります。
      そのため日本がいち早く適正な経済への20年ぶりの復帰を果たすことを願い、間違った方向に扇動しがちなメディアの情報にストップをかける一助になればとの思いで本ブログを書いております。

      • 海外在住者です(タイ国在20年超)。
        大変わかりやすい解説をありがとうございました。
        日本の報道で「人手不足」が叫ばれるのが不思議で、偶然貴サイトが検索ヒットいたしました。私自身は経済素人ですが、仮に日本経済全体で賃上げ/物価上昇となった場合には、輸出国家の日本は相応な円安が続かないとしんどくなる?など、まだまだ疑問だらけです。
        貴サイトをさらに拝読し、勉強させて頂きたいと思いますが、お薦めの書籍もございましたら、ぜひご教示いただけませんでしょうか?
        今後もわかりやすい解説に期待しております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

        • コメント、ありがとうございます。
          仮に日本が賃上げ物価上昇となった場合に円安が続かないとしんどくなる?とのご懸念ですが、その場合は円高となっても日本経済に悪影響は殆どないでしょう。
          90年代以降の日本はデフレで内需が疲弊していたから外需主導でしか経済回復ができなかったのです。
          だから、外需企業に影響のある為替次第で日本の景気や株価が大きく変動するのです。
          しかし、90年代以前の様に内需主導で経済が成長すれば円高の影響は殆ど気にしなくて良いでしょう。
          外需企業でも売上の半分は内需が占めているのが殆どです。
          逆に円高でコスト減で仕入れ更に内需回復を支援しトータルとして外需企業にもプラスになる可能性が高いでしょう。
          90年代以前の内需主導で日本が成長していた時期は円高株高が普通に併存していましたしね。
          お薦めの書籍ですか、、、う~ん、その人の現時点のレベルや趣向によってまちまちなので一概には言えないですが。
          投資や人生においてもっとも効果があるのは教養でしょう。具体的には政治、経済、心理などのあらゆる分野の古典になりますが、これらの難点は難解で眠くなる^^
          一方で、流行りのビジネス書は読みやすいが、解った気になり勘違いを招き、古典の上っ面をかすめた程度で内容が薄い・・・
          本当の力は積み重ねしかなくショートっカットはない、フリーランチはないってのが持論です。
          くどくなりましたが、参考として一例を上げさせて頂きます。
          60年以上前にかかれた内容とは思えないのが、ガブリエル・タルドの「世論と群衆」です。今でも十分に通用する内容であり、まさに古典です。
          インターネットがない時代に今の世の中の変化を見事に描いてます。群衆は同じ空間を共有する必要があるため、一定程度の規模以上にはならない。まさに、会社が大きくなりすぎたら周辺から崩れるイメージです。一方で、公衆はイデオロギーで繋がっているので規模や空間(場所)や時間(時代)の制約がなく拡大する。まさに、インターネットであり、イスラム国や、在宅ワークなど現代でも重要な視点です。ざっとこんな内容ですが、ものにできれば活用範囲が広いのが古典です。
          読みやすく今の日本株に役立つ視点が含まれている一つが、「リスク・テイカーズ ―相場を動かす8人のカリスマ投資家」でしょう。
          アクティビストやマクロヘッジファンド、また長期投資家のバフェットの視点など、これら日本にやってくる(きている)投資家の考え方は参考になるでしょう。
          最後に、少しアカデミックなとこで言うと、スティグリッツ、クルーグマン、ピケティなどは個人的にはまともだと思ってます。
          これらを如何に現実に落としこめるかで、単なる物知りと、実際に人生をよくする(投資家としても)人かに分れるでしょう。
          しかし、ある人の主張が100%正しいということはなく、部分的に間違っていたりするのが当然なため、あくまで客観性を担保しながら学ぶ必要があるでしょう。
          あっ、客観性といえばアドラーの「嫌われる勇気」にも、その点が学べますね。
          教えられるのではなく自分に合った切り口から分野を超えて勝手に学んでいくのが、遠回りの様で、実は本物の力をつける近道である、が私の持論です^^
          直ぐには回答できない時もありますが、気軽にご質問ください。ブログ記事に反映させたり、何らかの形でご回答するように心がけます。
          今後ともよろしくお願い致します。

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